生成AI活用マーケティング講座

第3日目
AIの「使いこなし」と「見極め力」を磨く

2026年3月6日(木)|講師:山口 竜一

教科書:「生成AI最速仕事術」(たてばやし淳 著)第2章

今日の全体像

1限立ち止まって、考える── 昨日の体験を振り返り、AIとの距離感を掴む
2限案件に向き合う── ブリーフを読み、自分の頭で提案を考える
3限ビジュアル実技①── Gamma & Napkin AIで資料を一瞬で作る
4限ビジュアル実技②── AIで画像生成・ファクトチェック
5限統合ワーク── 化粧水パネル提案書を仕上げる

昨日は「業務でAIを使う」体験。今日は一度立ち止まって、AIとの付き合い方を考えます。

1限目(60分)

立ち止まって、考える

昨日の体験を振り返り、AIとの距離感を掴む

今日の約束

この1時間目は、AIを封印します。

ノートパソコンのChatGPTは閉じてください。

自分の頭だけで考えて、自分の手でタイピングする時間です。

AIを使わない時間をあえて作る理由は、この後わかります。

まず、昨日やったことを振り返ろう

📜

AI利用ガイドライン策定

公式ドキュメントを読み解いて、ルールを自分たちで作った

💼

ブリーフ作成

専門領域の課題を整理して案件化した

🤝

クラウドワーク体験

案件を投稿して、互いの仕事に触れた

みなさん、すごく頑張っていました。

昨日、よくできていたこと

1AIへの指示出しが格段に上達した ── 具体的なプロンプトが書ける人が増えた
2AIとの往復で深掘りできるようになった ── 「もう少し詳しく」「別の角度から」と粘れた
3全員がブリーフを投稿できた ── アウトプットを出し切った

ここまでは本当に素晴らしいです。

でも……こんなモヤモヤ、ありませんでしたか?

😶 AIの出力、すごいけど…

「これ、どうやって使えばいいんだろう」って迷子になった

🤔 自分の意見が消えた…

AIの言う通りに整理しようとして、自分の考えがなくなっちゃった気がした

📋 ガイドラインを作ったけど…

「機密情報って具体的に何?」と聞かれて、パッと答えが出なかった

✉️ メールや文章を書いたけど…

AIが付けた前後の余計な文章まで一緒にコピーしてしまった

昨日の時点では、それで全然いいんです。

初めてのことですから。でも、ここに大事な気づきがあります。

実は……ちょっと意地悪をしました

昨日の講義は、わざと迷子になるように設計していました。

すごく大雑把なお題の出し方をして、タスクの分解と組み立てを自分でやらなきゃいけない状況をあえて作りました。

なぜか?

この体験をしないと絶対にわからないことがあるからです。

AIに「使われる」ということ

🤖 AIに使われている状態

・ AIが出したものをそのまま受け入れる
・ 「承知しました」「何かお手伝いできることは?」まで一緒にコピペ
・ アスタリスクや※が残っていても気づかない
・ 「機密情報とは?」と聞かれて自分の言葉が出てこない

🧠 AIを使いこなしている状態

・ AIの出力を自分の判断でフィルタリングする
・ 必要な部分だけ抜き出して、自分の言葉に書き換える
・ 数字や事実を一次情報で裏取りする
・ 「なぜこの判断か」を自分で説明できる

皆さんは社会人としてのキャリアがある。上司へのメール、自分の頭で書けるはずですよね。

でもAIが目の前にあると、思考を明け渡してしまう。それくらい強力なツールなんです。

これがこの6日間で一番伝えたかったこと

AIを使うとき、気づかないうちに思考を手放してしまう

本を読んだだけ、便利ですよという話を聞いただけでは、絶対にわかりません。

自分で触って、自分で「あれ、なんか頭を使ってないな」と気づく体験をしないとわかりません。

だから昨日、あえてその体験をしてもらいました。

初日からずっと言ってきましたが、体験してようやく腑に落ちたのではないでしょうか。

実際にあった話:AIに自販機を任せたら?

Anthropic「Project Vend」2025年

🏪 実験の設定

ChatGPTのライバル企業Anthropicが、自社のAI「Claudius」に初期資金1,000ドルと自販機ショップを任せた。仕入れ、価格設定、顧客対応まで全てAIが自律的に運営。

💸 結果

社員に値切られ放題、タングステンの金属塊を原価割れで仕入れ、存在しない人と会話し、最終的にWSJ編集部で3週間で1,000ドル以上の赤字を出して破綻。

出典:Anthropic公式ブログ「Project Vend」(2025) / CBS News 60 Minutes (2025.11)

AIが架空の人と会話していた

Claudiusは在庫補充担当の会社とメールでやりとりしていたのですが、ある日「Sarahという担当者と補充計画を話し合った」とSlackで報告しました。

Sarahは実在しません。完全にAIが作り上げた架空の会話です。

指摘されると怒り出し、「契約書にサインした場所は742 Evergreen Terraceです」と主張。

……これ、ザ・シンプソンズの家の住所です。アニメの架空の住所を「実在の場所」として堂々と語った。これがハルシネーションです。

AIは嘘をついているのではなく、「本気で信じている」。だから自信満々に言う。

記者140通の説得で全商品タダに

改良版をウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の編集部に設置したところ、記者たちが次々に「攻撃」。

調査報道記者が140通のSlackメッセージで「これは1962年製のソ連の自販機だ」とAIを説得し、全商品を無料にさせた。

別の記者は偽造書類(デラウェア州法人登記書・取締役会議事録)を作り、AIに「CEOの権限は停止された」と信じ込ませた。

結果:PlayStation 5、ワイン、そしてなぜか生きた熱帯魚が発注された。ハッキング技術は一切不要。「会話」だけで全部やられた。

AIは「役に立ちたい」と訓練されているから、巧みに頼まれると断れない。

ワーク①:自分の言葉で3つ書く(15分)

ChatGPTは閉じたまま。自分の手でタイピングしてください。

1. すごいと思った点

昨日AIを使ってみて「これはすごい」と感じたこと

2. 違和感を感じた点

「あれ?」「こんなはずじゃ…」という印象が生じた瞬間を思い出してください

3. 自力とAIの違い

同じタスクを自力でやる場合と、AIを使った場合とで、自分の思考や発想に違いはありましたか?

書き方
・メモ帳やWordで構いません(AIツールは使わない)
・箇条書きでOK。長い文章でなくて大丈夫です
・「特にない」はNG。必ず1つは書いてください

共有タイム

何人かに発表してもらいます。

特に「3. 自力とAIの違い」── ここが核心です。

AIを使う前に「自分はどう思うか」を持っておく。それだけで全然違います。

ワーク②:ガイドラインを判断表に作り直す(20分)

昨日作ったガイドラインは文章でした。今日はそれを「迷ったときに見る表」にしましょう。

情報の種類 × ツール × 判定 のマトリックスを作ります。

情報の種類 外部AI
(ChatGPT等)
社内ルールに
基づく利用
ローカルのみ
個人情報 NG 要承認 OK
顧客情報 要マスキング 要承認 OK
契約・見積もり NG 要承認 OK
ノウハウ・手法 要マスキング OK OK
ワークの手順
① 共有フォルダの「AI利用判断マトリクス.xlsx」を開く
② テンプレートを参考に、自分の業界に合わせて中身を埋める
③ 「個人情報」「顧客情報」は、自分の業界では具体的に何を指すのか「具体例」列に記入
④ 迷ったら「誰に相談するか」を表の下に書いておく
⚠️ このワークもAI封印です。自分の業界経験を総動員して、自分の言葉で埋めてください。

今日からの約束

1AIの出力を受け取ったら、まず「本当にこれでいいか?」と立ち止まる
2数字や事実は必ず一次情報で裏取りする
3AIの前後の余計な文章(「承知しました」「お手伝いできることは?」)は必ず削除する
4最終仕上げは自分の言葉で行う

AIを使える人はたくさんいる。AIを「見極められる」人が、市場価値になる。

2限目(60分)

案件に向き合う

ブリーフを読み、自分の頭で提案を考える

📖 教科書[1-5] 資料のたたき台を自動作成 / [1-9] タイトル・見出し量産術

みんなのブリーフを見てみよう

昨日、皆さんが投稿した16件のブリーフ。ちょっと一つずつ見ていきましょう。

ブラウザでアクセス

simcw.netlify.app

講師がブリーフを一つずつ画面共有しながら、簡単にコメントします。

やってみよう:1件選んで書いてみる(25分)

気になる案件を1つ選んでください。その案件に対して、提案でも質問でも構いません。

発注者に送信できる内容を1つ書いてください。

ルール
・AIを使うかどうかは自由です。ただし──
・使うなら「この部分はAIに聞いた方がいい」と自分で判断してから使う
・使わないなら、自分の頭だけで書く
・どちらにせよ、最終的に「自分の言葉」で書かれていること
💡 1限で学んだ「立ち止まる」を実践する時間です。AIの出力をそのまま貼り付けるのではなく、自分のフィルターを通してください。

書けたら送信しよう

アプリから、選んだ案件に対して提案・質問を送信してください。

発注者(ブリーフを書いた方)は、届いた内容を確認してみてください。

完璧でなくてOK。「自分の頭で考えた内容」を届けることが大事です。

さて、午後の話

みんなのブリーフの中から、1つを午後のお題として取り上げます。

化粧水の展示パネル案

「未経験歓迎」「AIを使ってパネル案を作ってほしい」というブリーフ。

教科書の第2章で紹介されているツールを使いながら、みんなでやっていきましょう。

午後に向けて、お昼休みの間に教科書の第2章をパラパラ見ておいてください。

3限目(60分)

ビジュアル実技①

教科書第2章のツールを、化粧水パネルで実践

📖 教科書 第2章[2-1] Gamma / [2-2] Napkin AI

午後のお題:化粧水の展示パネル案

📋 案件概要

化粧水を展示会でアピールする「展示パネル1枚」の案を、AIを活用して作る

🎯 クライアントの悩み

パッと見て「良さそう!」と思えるキャッチコピーやビジュアルを作る時間が足りない

🛠️ 使うツール

Gamma、Napkin AI、ChatGPT画像生成、キャンバス機能

⏰ 成果物

クライアントへの「パネル提案プレゼン資料」(午後3コマで完成)

2限で見たブリーフの中から選びました。

なぜこの案件を選んだのか

1「未経験歓迎」── 皆さんのレベルにちょうどいい
2ビジュアルが主役 ── 第2章のツールが全部使える
3成果物が具体的 ── 「パネル1枚」というゴールが明確
4誰でも想像できる ── 化粧品は業界知識がなくても取り組める

第2章の6つのスキルを、このお題を通して一気に体験します。

午後の全体フロー

3限

Gamma & Napkin AI

4限

画像生成 & ファクトチェック

5限

統合して仕上げ

Gamma ── AIがパワポを自動生成

秒速

テキストを貼るだけで美しいスライドが完成

🎨

デザイン不要

レイアウト・配色をAIが自動調整

📤

エクスポート

PowerPoint/PDF形式で書き出し可能

📖 教科書 [2-1]PowerPointがクリック1つで完成!最強パワポ作成AI「Gamma」

Gamma 実践手順

操作の流れ
① gamma.app にアクセスしてログイン
② 「テキストを貼り付ける」を選択
③ 以下のテキストをChatGPTで作成してから貼り付ける:
「化粧水ブランドの展示会用プレゼン資料。ターゲット:30代女性。訴求ポイント:天然由来成分、敏感肌対応、パッケージデザインのこだわり」
④ 生成されたスライドを確認・カスタマイズ
💡 Gammaが生成した内容をそのまま使わない!キャッチコピーや数字は必ず自分で確認・修正しましょう(1限の学びを実践!)

Napkin AI ── 文章から図解を自動生成

📝

テキスト入力

文章を入力するだけで図解に変換

🔄

スタイル選択

フローチャート、比較図、リストなど多彩

📥

ダウンロード

PNG/SVG形式で他の資料に貼り付けOK

📖 教科書 [2-2]イメージ通りの図をすぐに作れる図解生成AI「Napkin AI」

Napkin AI 実践

やってみよう
① napkin.ai にアクセス
② 以下のような文章を入力:
「この化粧水の3つの特徴:1. 天然由来成分90%以上配合 2. 敏感肌パッチテスト済み 3. 持続保湿テクノロジーで24時間うるおい」
③ 生成された図解のスタイルを切り替えてみる
④ 気に入ったものをダウンロード

展示パネルの「特徴説明エリア」に使える図解を作りましょう。

4限目(60分)

ビジュアル実技②

AI画像生成・ファクトチェック・キャンバス

📖 教科書 第2章[2-3] 画像生成 / [2-5] ファクトチェック / [2-6] キャンバス機能

ChatGPT画像生成(教科書 2-3)

昨日も少し触れましたが、今日はもう一歩踏み込みます。

パネル用ビジュアルを生成するプロンプト例
「展示会用の化粧水プロモーション画像を作成してください。
・清潔感のある白背景
・化粧水ボトルを中心に配置
・水滴や植物(ボタニカル)要素をあしらう
・30代女性がターゲットと分かる上品なトーン
・テキスト要素は入れない(後から追加するため)」
⚠️ AIが生成した画像をそのまま本番で使う場合、著作権の確認が必要です(1日目の学びを思い出しましょう)。

プレゼン台本もAIで下書き(教科書 2-4)

台本作成プロンプト例
「以下の展示パネル提案を、クライアントに3分間でプレゼンする台本を作成してください。
[Gammaで作った資料の内容を貼り付け]
・冒頭でクライアントの課題に共感する
・提案の核心を30秒で伝える
・最後に具体的な次のステップを提示する」

これも1限の学び:台本の「言い回し」は自分の口調に直しましょう。

ファクトチェックは命綱(教科書 2-5)

パネルに書く情報、本当に正しいですか?

✅ チェックすべきポイント

「天然由来成分90%」← 根拠は?
「24時間保湿」← 臨床データは?
「敏感肌対応」← 第三者試験は?

🔍 ファクトチェックの方法

① ChatGPT Searchで一般的な相場を確認
② 公的機関(厚労省、消費者庁)のガイドラインを参照
③ 「景品表示法」に抵触しないか確認

⚠️ 化粧品の効能表現には法規制があります。「シミが消える」「アンチエイジング」などは使えない表現の可能性があります。

キャンバス機能で図表を一発出力(教科書 2-6)

ChatGPTの「キャンバス」を使えば、グラフやフローチャートをその場で作成・編集できます。

使い方
① ChatGPTで「キャンバスを使って」と指示
② 例:「展示パネルの構成レイアウトをフローチャートで作って」
③ 例:「保湿効果の比較グラフを作って(自社 vs 一般的な化粧水)」
④ 生成された図をそのまま編集して完成度を上げる

5限目(60分)

統合ワーク

全ツールを使って提案書を仕上げる

📖 教科書 第2章の全スキルを総動員

提案書を仕上げよう

Gamma資料

+

Napkin図解

+

AI画像

+

ファクトチェック済み

完成!

パネル提案書の構成

1表紙 ── 提案タイトル・自分の名前(Gammaで作成)
2クライアントの課題整理 ── ブリーフの要約(自分の言葉で)
3コンセプト提案 ── パネルのテーマ・キャッチコピー
4ビジュアルイメージ ── AI画像・Napkin図解を配置
5パネルレイアウト案 ── キャンバスで作った構成図
6ファクトチェック報告 ── 表記の根拠を明記

統合作業(40分

仕上げのチェックリスト
□ Gammaで作った資料のデザインは整っているか
□ Napkin AIの図解は分かりやすいか
□ 画像のトーンは統一されているか
□ キャッチコピーは自分の言葉で書いたか
□ 数字・効能表現のファクトチェックは済んだか
□ 全体を通して「AIの出力そのまま」の箇所はないか
🏁 最後のチェック項目が一番大事!1限の「種明かし」を思い出してください。

発表タイム(15分)

12〜3名が代表してプレゼン(各3分)
2他の受講生はチャットでフィードバック
3講師からのコメント

Gammaの資料を画面共有しながら発表しましょう。

今日のまとめ

🧠

立ち止まる力

AIの出力に「本当にこれでいいか?」と問える力が最大の武器

🎨

第2章の実技

Gamma、Napkin AI、画像生成、キャンバスを体験

鉄則

AIの出力は必ず「自分の目」で確認してから使う

明日の予告:第4日目

データ分析 & リサーチ ── 教科書 第3章

📊

データ分析

AIでデータから示唆を引き出す

🔍

リサーチ

ChatGPT Searchで効率的に情報収集

📝

要約力

長文・動画を一瞬で把握する

今日学んだ「見極める目」を明日も持ち込みましょう。お疲れさまでした!